
院長:後藤お気軽にご相談ください!
忙しい仕事の合間に、温かいお茶をひと口。ほろ苦さが口に広がり、「ふう」と肩の力が抜ける。
そんな時間に、ほっとした経験はありませんか。
東洋医学には、苦みと「心(しん)」を結びつけて考える伝統があります。(そもそも五行説といのがあり「世の中の物事や性質を5つに分類して、その関わり合いまで考えた」ものがあります。例えば、五臓といわれる「肝・心・脾・肺・腎」、五味といわれる「酸・苦・甘・辛・鹹」つまり「すっぱい・苦い・甘い・辛い・しょっぱい」などです。)
一方、現代の研究では、お茶に含まれるテアニンなどの成分と、気分やリラックスとの関係が調べられています。ただし、「苦い味そのものが心を落ち着かせる」と科学的に証明されているわけではありません。 しかし、東洋医学では苦みと心は関係性があり、昔から苦みと心の関係性を考えていたことは間違いないです。なんとなく、お茶の苦みや甘み、温かみを感じながら飲むと心が落ち着くときありますよね。
今回は、お茶の味をつくる成分と東洋医学の考え方を交えながら、一杯のお茶と心の関係をひもといてみましょう。


緑茶を飲むと、苦みだけでなく、口の中がきゅっとする渋みや、まろやかなうま味も感じられます。その味わいに関わる代表的な成分が、カテキン、カフェイン、テアニンです。
| 成分 | 主に関わる味わい |
|---|---|
| カテキン類(タンニン) | 苦み・渋み |
| カフェイン | 苦み |
| テアニン(アミノ酸の一種) | うま味・甘み |
お茶の味は、一つの成分だけで決まるわけではありません。これらの成分が重なり合うことで、すっきりとした後味や、やわらかい口当たりが生まれます。
ここで知っておきたいのは、リラックスとの関係が研究されているテアニンは、苦みではなく、うま味や甘みに関わる成分だということです。「苦いから落ち着く」という感覚と、成分の働きは、少し分けて考える必要があります。
テアニン(こころを落ち着かせる)
アミノ酸の一種でお茶のうま味を決める成分。イライラや緊張、興奮を和らげてくれる作用があります。温かいお湯でも低温でもしっかりお茶の葉から溶け出す性質があり、水出し茶でも成分は抽出されるようです。心落ち着かせる成分と覚えましょう。
タンニン・カテキン(からだの酸化を防ぐ)
お茶の渋みを決める成分。カテキンもこの一種だそうです。抗酸化作用と抗菌作用を持ち、体の酸化や肌の老化を防ぐだけでなく、虫歯や口臭予防などにも役立つといわれています。高い温度のお湯に溶け出すので効果を狙うなら熱いお湯で注ぐのがいいです。からだの酸化を防ぐ成分と覚えましょう。
カフェイン(苦みをきめる成分)
カフェインといえばコーヒーや栄養ドリンクに入っているイメージがあるのは私だけでしょうか?でも実は紅茶も緑茶にも入っている成分です。集中力を高める覚醒・興奮作用があります。熱いお湯に溶け出しやすいので、集中力を高めたいと思った時には熱いお茶もいいかもしれませんね。交感神経に作用するので、血液の循環を促す作用があり低血圧の予防や肩こりにもいいです。
※ただし、どの成分も摂りすぎは禁物。過ぎたれば及ばざるごとしです。
東洋医学では、食べ物の味を「酸・苦・甘・辛・鹹(かん)」という五つの味に分け、五臓と関連づけて考えます。鹹とは、塩辛い味のことです。
その対応は、次のとおりです。
なかでも、苦みと結びつくのが「心」です。


東洋医学でいう「心」は、血液を送り出す心臓という臓器だけを指す言葉ではありません。意識や感情、精神活動も含めて捉える、伝統医学上の概念です。そのため、苦みと心の関係は、気持ちの落ち着きについて考える際にも語られてきました。ただし、この五味と五臓の対応は、東洋医学の理論体系によるものです。「苦いものを食べれば心臓病が治る」「苦みが強いほど精神が安定する」という意味ではありません。個人的な考えになりますが、物事を属性に分けると考えると、苦みと心は同じ属性。状態によって変化すると考えれば、いつも同じとは限りません。
例えば、今日は「ビールが旨い!」といっても若い時はビールの苦みが嫌いという人もいます。お茶も苦みが旨いと感じるときもあれば、苦みを罰ゲームのように感じるときもあります。心の状態が変化していれば満ち足りていない時なら「旨い!」と感じ、満ちている時ならば「苦い!」と感じてもおかしくないと考えられます。




お茶を単なる喉の渇きを潤す飲み物ではなく、「心身をいたわるためのもの」として捉えていたことには、今の暮らしにも通じる魅力があります。
お茶に含まれるテアニンについては、気分やリラックス、睡眠などとの関係が研究されています。
ただし、研究結果は一様ではありません。研究をまとめたレビューでも、リラックスに関する結果には大きな不確実性があり、睡眠への効果も一貫していないとされています。また、成分を一定量摂取する研究の結果を、普段飲むお茶一杯にそのまま当てはめることはできません。
さらに、お茶には眠気を覚ます作用を持つカフェインも含まれています。つまり、お茶は「飲めば必ず眠くなる」「誰にでも気持ちを落ち着かせる」といった飲み物ではないのです。東洋医学の「苦みは心に関わる」という考え方と、一方では、漢方と同じように生薬が1つで作用する西洋医学的な漢方薬は少なく、いくつかの生薬が混ざって体に作用するということを考えると、カフェインの苦みとタンニンの苦み、そしてテアニンのうま味が混ざり複合的に作用しているということも考えられます。現代の成分研究は、それぞれ異なる見方です。同じ仕組みを説明しているわけではないので、それぞれを大切にして楽しみたい内容ですね。
お茶を暮らしに取り入れるなら、「体によいから」と苦みを我慢するよりも、自分がおいしいと感じる一杯を楽しんでみませんか。たとえば、こんなひとときです。
これは、特定の治療効果を目的にした方法ではありません。忙しさの中で、「今、お茶を飲んでいる自分」に目を向けるための、小さな休憩の提案です。
眠りたい時間帯や、カフェインが気になるときには、無理に緑茶を選ばず、カフェインを含まない飲み物で同じようなひとときをつくるのもよいでしょう。お茶に含まれるカフェインには覚醒作用があるため、休息のための一杯でも、その点は意識しておきたいところです。
お茶の苦みには、東洋医学で「心」と結びつけられてきた歴史があります。そして現代では、テアニンなどの成分からも、お茶と気分の関係が研究されています。ただし、どちらの視点からも「苦ければ苦いほどよい」と考える必要はありません。
大切にしたいのは、効能を求めて無理に飲むことよりも、自分に合った味を楽しむこと。
今日のひと息に、養生としてのお茶の時間を。
ほろ苦さの向こうにある、やさしいうま味まで、ゆっくり味わってみてください。

